自由のなる木

RSS
公開日
2022-11-06

SourceHut が暗号通貨関連プロジェクトを削除する方針であることをアナウンスした

先週、SourceHut が暗号通貨関連プロジェクトを削除する方針であることをアナウンスし、Lobste.rs で話題になっていることを目にした。

SourceHut は、私がメインで利用している Git リポジトリのホスティング機能などを提供する GitHub のようなソースコード管理サービスで、このブログをホスティングしている場所でもある。

SourceHut の特徴的なところは、プロジェクト管理にメールベースのワークフローを採用しており、サービス全体がすべて自由ソフトウェアで構成されているという点だ。

私は SourceHut の開発者である Drew DeVault 氏を、自由ソフトウェアを牽引するロックスターとしても注目しており、プログラミング言語 Hare なども含め、彼の動向には敏感だったりする。

さて、余談はここまでにして、アナウンスの内容に戻る。

アナウンスの趣旨は下記だ。

  1. SourceHut は、2023 年の利用規約の更新にて暗号通貨またはブロックチェーン関連プロジェクトを禁止する
  2. これらのプロジェクトは主に投資詐欺的な行為に利用され、詐欺被害者を作り、さらには地球環境への悪影響をも及ぼす
  3. 2. に該当しない場合があれば、ホスティングを許可するように申請することができる
  4. SourceHut のプロジェクトで暗号通貨による寄付を求めることは問題としない

以上のとおり、非常に強い態度の主張である。

私は暗号通貨にもブロックチェーンにも明るくなく、暗号通貨に関係する詐欺まがいな犯罪があることは、一般ニュースで知ることがある程度だ。

なんとなくきな臭い感覚はあるが、自分自身が被害を受けたことも、周りに被害を受けた人もいない。より正確に言えば、興味がない。

したがって、この主張が正しいものか、誤ったものかの判断をする立場にない。

では、なぜこのアナウンスを話題に出したかと言うと、このアナウンスを通して、自由ソフトウェアでサービスを運営する利点を知ったからだ。

先ほど言及したとおり、SourceHut はサービス全体がすべて自由ソフトウェアで構成されている。

具体的には、主要な機能のソースコードは AGPLv3 でライセンスされている。

したがって、現在、SourceHut にある暗号通貨関連プロジェクトは、SourceHut のライセンシーでもあるということになる。

つまり、彼らは SourceHut が直接提供するサービスからは締め出されることになるが、セキュリティパッチや最新の機能も含め、SourceHut というソフトウェアは今後も不自由なく使い続けることができるということだ。1

それ故、このアナウンスは、人によっては運営者の独善的なサービス方針の変更に見えたかもしれないが、私の目には全く悲観的には映らなかった。むしろ、運営者のやさしさすら感じてしまったのだ。

これは自由ソフトウェアでサービスを運営することの利点だと思った。サービス運営者がユーザーにとって不利益となるサービスの変更を加えたとしても、サービス利用者には常に逃げ道が用意されているため、批判を受ける筋合いがない。

少し話題が逸れるが、先日、Elon Musk 氏によって買収が成立した Twitter では、取締役の解雇や従業員の大量解雇が実施され、我々が利用するサービスの内容にも不利益な変更が加えられるかもしれない恐れを感じている。

仮に、Twitter でユーザーにとっての不利益な変更があった場合、これとは対照に、それらの変更に対しては我々は無力である。

現在、このようなことを危惧しているユーザーが、Twitter から Mastodon へ再び移行する流れがあるようで、私が普段利用している Mastodon インスタンスでも、この 1 週間で 6,500 ユーザーほど新規ユーザーが増えたそうだ。

SourceHut と同様に Mastodon は AGPLv3 でライセンスされているソフトウェアだ。つまり、所属している Mastodon インスタンスのポリシー変更があっても、ユーザーには常に逃げ道がある。サービス運営者は強硬な態度を取っても許される。

自由ソフトウェアでサービスを運営するということは、サービス利用者にとって利点があると同時に、サービス運営者にとっても利点があるということを今回学んだのだった。

以上。


  1. 具体的には SourceHut をセルフホスティングしたり、他の SourceHut インスタンスに移ることができる。